二代目や三代目などで新たに社長に就任し、事業承継するときは必ず考えなければいけないことがあります。それは、新規事業です。

同じビジネス内容で未来永劫ずっと稼ぎ続けられるほど、ビジネスの世界は甘くありません。どこかで方向転換するからこそ、会社の事業がうまく回るようになり、稼ぎ続けられるようになります。既存のビジネスにしがみついている会社は確実に倒産します。

そのため、二代目や三代目が事業承継する場合は第二創業として、積極的に新規ビジネスを育て上げていかなければいけません。

そうしたとき、どのように考えて二代目や三代目は事業承継を実践しなければいけないのでしょうか。ここでは、「補助金・助成金などの活用も含めながら、既存の会社が事業承継するときに考えるべき事柄」について解説していきます。

二代目や三代目で会社が潰れるリスクが高い

知っての通り、ビジネスでは残る会社のほうが圧倒的に少ないです。よく言われるのは、10年経過後に生き残る会社は約6%という事実です。

多くの会社は新規事業を立ち上げて消えていきます。そのため、10年以上も続いている会社を事業承継できる二代目や三代目というのは、何もない状態から起業する人に比べて、圧倒的に有利な立場で引き継いでいるといえます。

しかし、実際のところ二代目や三代目は会社を倒産させるリスクが非常に高いです。

これは決して、二代目や三代目の経営能力が劣っているというわけではありません。既に商品やマーケット(お客さん)がいて、社員も在籍しているので実際のところ事業承継して数年は何も考えなくても売り上げが立ち、利益を出し続けることができます。

ただ、マーケットが必ず縮小してくるようになります。環境が変わっていくからです。

例えば、普段の生活で着るものはどのように変わっていったでしょうか。その昔、昭和の時代の日本では着物を着る人が大多数でしたが、いまはほとんどいません。そのため、昔の日本で呉服屋(着物屋)は儲かっていましたが、いまはマーケット規模が非常に小さいです。

私の知り合いの社長にも伝統文化に関わる会社があり、彼は「毎年シェアは上がっているが、売上は下がっている。シェアが高くなっているのは同業が潰れただけ」と嘆いていました。

このように二代目や三代目で会社が潰れるのは、市場の要因が強いです。売れる商品はその時代に合わせて変わっていくため、何も対処せずに現状維持を続けていると会社は衰退するのです。ビジネスにおいて「現状維持=衰退の始まり」と考えなければいけません。

第二創業へチャレンジするべき理由

そこで、二代目や三代目は第二創業にチャレンジする必要があります。既存のビジネスだけに取り組むのではなく、新しい事業を行うのです。生き残れる人(会社)というのは、強い人ではなく変化できる人だといえます。

これは、大企業でも同様です。例えば、誰もが知っている大企業として富士フイルムがあります。いまでは化粧品や医薬品、医療機器、化学材料など、非常に幅広く手掛けています。以下は富士フイルムが実際に販売している化粧品です。

ただ、富士フイルムという社名からわかる通り、元々はフィルム会社でした。写真撮影でフィルムを活用するため、そのための会社だったわけです。

しかし、いまの時代にフィルムを使うことはありません。すべてデジタルカメラにとって代わっています。

「技術革新により、まさかフィルムがなくなるとは」と、当時の人は想像していません。ただ、新技術によってフィルムが不要となり、売れなくなったわけです。ただ、富士フイルムの場合は自社の技術を活かして別事業を展開し、生き残っています。

これと同じことを実践しなければいけません。中小企業でも大企業でも、そのときの環境に合わせてビジネス展開しなければ生き残れないのです。

二代目や三代目になって会社を倒産させる可能性が非常に高いのは、何も対策せずに過去と同じ商売を繰り返している人が大多数だからです。そうではなく、新たな事業に挑戦しなければいけません。

コア技術を活かして新規事業を行う

このとき第二創業するにしても、完全に新たな分野に挑戦するべきではありません。先代社長が成し遂げてきた既存ビジネスを活かし、新規事業をスタートさせる必要があります。

もちろん突拍子のないアイディアは不要です。先ほどの富士フイルムについても、化粧品や医療機器など既に存在するビジネスに参入しました。アイディア自体は普通ですが、そこに自社の強みを活かすことで生き残ったわけです。

これは中小企業も同じです。例えば、私と取引している会社に「元々はベルトの受注事業(OEM事業)」をしていた法人があります。社員数5人ほどの中小企業ですが、100年以上続く会社です。以下はその会社と打ち合わせしたときの様子です。

ただ、ベルトのOEM(他社のブランドを生産する事業)をするとはいっても、日本製のベルトだけでビジネスを展開するのは難しいです。そこで、ベトナムなど海外で生産する仕組みを整え、安くて大量生産できるようにしています。

またベルトに限らず、財布やバッグなどの生産受注も受け付けています。そのため一つのOEMメーカーでいろんな革製品に対応でき、非常に便利なので私の会社はお付き合いさせてもらっています。もし、既存ビジネスに捉われてベルト生産のみをしていたら、この会社には仕事を依頼していなかったかもしれません。

このように、第二創業とはいってもアイディア自体はそこまで画期的なものである必要はありません。

  • 似た分野に進出し、別マーケットで市場を取る
  • 海外に着目し、市場開拓する
  • EC事業を始め、ネットマーケティングをする

対象商品の分野は何でもいいので、いまのビジネス内容や営業手法とは異なるやり方で既存商品を別マーケットで販売したり、新商品を開発したりするのが第二創業に当たります。

また、事業承継での第二創業は「何もない状態から新ビジネスを作る」というわけではなく、コア技術があるので非常にやりやすいといえます。二代目や三代目で倒産リスクが高いとはいっても、きちんと第二創業をすれば圧倒的に楽をしながらビジネスを続けることができるといえます。

事業承継での補助金・助成金は有効なのか

ただ、第二創業を完了させるにはお金が必要です。新規ビジネスをスタートさせるとき、お金がなければ何もできません。新たな機器を購入することも、新事業に力を注げる人材を採用することもできないのです。

そうしたとき、多くの経営者が着目する手段に補助金・助成金の活用があります。銀行や日本政策金融公庫からの融資とは異なり借金ではありません。補助金・助成金は返さなくてもいいお金になります。

特に事業承継補助金という資金が広く活用されており、第二創業ではこうした補助金を考える人が多いです。

補助金の内容は毎年違います。ただ、「中小企業である」「地域に根差したビジネスをしている」「2~3年以内に事業承継し、社長交代している」などの会社であれば対象になり、数百万円ほどが助成されます。

注意点として、事業承継に伴う株式購入費用などに活用することはできず、あくまでも第二創業へチャレンジした場合にのみ事業承継補助金を活用できると考えましょう。新たな取り組みとしては、例えば以下のようなことが該当します。

  • 新たに機器を購入する
  • 人を雇って新規事業をする
  • 新店舗を開店させる
  • ネット事業を開始させる
  • 新製品を開発する

第二創業を開始するからこそ、事業承継補助金を利用できるのです。

なお、このときは「事業再編を実施しなければ事業承継が難しい場合」についても補助金を活用できます。これについては、事業所の廃業・解体や原状回復(リフォーム)も含みます。

利用場面の少ない中小企業の事業承継補助金

ただ、実際のところ事業承継補助金を活用する機会はそこまで多くはありません。

事業承継したばかりの会社にとって、重要なのは「すぐに第二創業のために新ビジネスをスタートさせる」ことではありません。それよりも経営に慣れ、既存社員との関係性を構築することに注力するべきだといえます。

これには1~2年ほどかかるため、新ビジネスのスタートはその後でもいいのではといえます。経営能力のない段階から新事業を考え、実行しても高確率で外します。補助金を使うとはいっても、お金が出ていくことには変わりないのでキャッシュフローは悪くなるのです。

また、支出したお金の全額を補助してくれるわけではありません。あくまでも、一部のお金を補ってもらうだけになります。

しかも補助金や助成金は事業承継の場面に限らず、他にもたくさん種類が存在します。そのため事業承継補助金にこだわる意味はなく、他の補助金・助成金を利用すれば問題ありません。

二代目や三代目が第二創業を行うのは必須だといえます。ただ、慌てて新ビジネスをスタートさせても失敗するだけなので、事業承継を完了させて落ち着いた後に何をすればいいのか考えるようにしましょう。

もちろん、事業所の解体やリフォームなどで事業承継補助金を活用する意義は大きいです。ただ、第二創業として新ビジネスを開始するときについては、事業承継補助金を利用してもいいですが、その他の補助金・助成金を活用しても問題ありません。

なお、補助金や助成金の申請を自らの力で行う経営者はおらず、必ず行政書士や社労士などに依頼することになります。そこで、事業承継で依頼する税理士に「事業承継に関する補助金や助成金に慣れている専門家」を紹介してもらうなどして、行政書士や社労士の力を借りながら補助金を得るといいです。

中小企業の事業承継では新規事業が必須

法人の事業承継では、株価対策など生前贈与や相続などによる贈与税・相続税を抑えることに着目しがちです。ただ、事業承継で重要なのは節税だけでなく「その後にビジネスを発展・継続させることができるか」があります。

二代目や三代目での会社の経営状況がそこまで悪くなかったとしても、同じビジネスを継続して何となく実施しているだけでは、高確率で会社は倒産します。ここまで述べた通り、お客さんが求めていることはその時代によって変化するからです。

こうした変化に耐えられるように第二創業を積極的に行いましょう。もちろん後継者が社長に就任して慣れた後でいいので、既存のコアビジネスを活用しながら新たな事業の柱を立てるのです。

このとき、多くの経営者が補助金・助成金の活用を検討します。ただ、事業承継補助金は新たな取り組みしかお金が出ません。また原状回復などの事業再編なら非常に使い勝手がいいものの、事業承継補助金を活用して慌てて新ビジネスをスタートさせるのは避けて、慎重になりましょう。

事業承継後の第二創業では、こうしたビジネスでの基本原則を理解したうえで、実行に移すといいです。焦る必要はないですが、環境の変化に耐えられるように新ビジネスを創出していきましょう。

法人・個人事業主の事業継承で、一瞬で3,500万円以上を節税する税金対策

法人や個人事業主では、いつかの時点で必ず事業承継する必要があります。このとき問題になるのは「誰にどの事業を移すのか」「節税したうえで事業譲渡する」ことに尽きます。

その中でも特に節税は重要であり、ほとんど儲かっていな事業主でも「事業価値が1億円以上」となるのは普通です。このときき、そのままの状態で生前贈与すると5,000万円以上の税金となり、事業承継がきっかけで後継者は破産します。

そこで税金対策を講じることにより、事業承継で発生する無駄な税金を抑えなければいけません。親族トラブルが起こらないように調整するのは当然として、早めの節税対策が必須になるのです。

「税金をゼロにする優遇税制」「会社価値を一気に6割減にできる法人保険」など、事業承継では無数のスキームが存在します。そこで、事業承継に特化した専門家を紹介します。これにより、高額な節税を実現しながらもスムーズな事業の引き継ぎが可能になります。

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