美容室・ヘアサロンのオーナーとして活躍する人は多いです。コンビニよりも圧倒的に数が多いことで知られており、さらには大多数が個人事業主や中小企業オーナーであるため、その分だけヘアサロンの事業承継で悩む人が多くなるのです。

それでは、美容室の事業承継を実現するときは何を考えればいいのでしょうか。

非常に多くの美容室が乱立している状態であるため、当然ながら事業承継のときはヘアサロン独自の注意点があります。これらを理解したうえで生前贈与や相続の手続きを進めていかなければいけません。

そこで、どのようにして美容室オーナーが事業承継を進めればいいのかを解説していきます。

個人事業主・中小企業がほとんどの美容室

小規模で活躍している人の多い業態が美容室です。社員として数年ほど経験し、腕を磨いた後は独立する人が大多数だからです。その結果、世の中にあるビジネスの中でも美容業界は圧倒的に自営業や中小企業が多い業態となっています。

私の中学生や高校生時代の同級生でも、美容室オーナーとして開業した人はたくさんいます。そうした人の中には、数店舗を運営して法人化した人もいます。

こうして美容室が増えていく状態であり、中には年齢を重ねている美容室オーナーも多いです。そうしたとき若いときはいいものの、ある程度の年齢になると引退を考えなければいけません。

事業承継で考えるべき最初のポイントに後継者探しがあります。後継者を見つけなければ、引き継がせる相手がいないので事業承継を実現することはできません。

親族内承継は美容業界で活発ではない

事業承継をするとき、最も一般的な方法に親族内承継があります。つまり、同じ家族の中で子供や孫に継がせるのです。

ただ美容師の場合、親族内承継はそこまで多いわけではありません。子供や孫が美容師を目指すとは限らないからです。医師であれば、子供も医師であることが多いです。ただ、美容師の場合はそうでないケースが非常に多いです。

また、たとえ美容師になったとしても他の地域で子供や孫が活躍していることが非常に多いです。特に地方在住者の美容室オーナーであると、「子供は美容師だが東京や大阪で活躍している」というケースがよくあるのです。そうなると、親族内承継はうまく進みません。

社員美容師を育てる親族外承継は多い

そのためヘアサロンでは親族内よりも、親族外承継が行われています。このときまったく知らない人を外部から引っ張ってくるよりも、社員として活躍している人へそのまま譲渡してしまうケースが多いです。

リアル店舗をもつビジネスとはいっても、例えば飲食店などであれば社員が勤めている会社を継ごうと思うケースは少ないです。一方で美容師であれば、独立を考えている人が大多数であるため、独立を目指す社員に声をかければ問題なく引き継いでくれるケースが多いのです。

そのような社員にしても、ゼロの状態から店を作るよりも引き継ぐほうが楽をできます。既にお客さんが付いていますし、他の社員もいる状態です。店内の設備もある程度、整っています。そのため、社員から後継者を探す方法が広く採用されています。

もちろん、後継者を見つけることができたとしても契約者の名義変更など、一般的な事業承継と同じようにやる作業は多いです。ただ、独立が非常に多い業界だからこそ社員に「店を継がないか?」と打診したとき、やる気になってもらいやすい特徴があります。

また、既に会社で働いている人が経営者に就任するため、他の社員としては給料体系や働き方が変わるわけではなく、不満が出にくい事業承継の方法になります。

M&Aによる売却も非常に多い

ただ、社員に店舗(会社)を譲ってもいいですが、それと同じくらい多い事業承継の方法としてM&Aがあります。事業譲渡してしまい、会社ごと売り払ってしまうのです。

美容室の商圏は非常に狭く、テナント(店舗)から半径500m~1kmほどです。そのため、M&Aによって買取を考えている会社はそれなりにあります。

スーパーやコンビニ、ドラッグストアは近くの商圏で多店舗展開しています。これと同じように美容室も商圏が狭いので、それぞれの店舗を密集させる形で展開することがほとんどなのです。そうすればお客さんからの認知度も上がり、売上につながりやすくなります。

また、M&Aであれば後継者として社員を育てる必要がありません。既に店舗運営のノウハウをもつ、ある程度の規模の会社が買取することになるため、その後の経営についてはあまり心配する必要がないのです。

売却額が高価なわけではない

ただ、美容室のM&Aを行うときに注意するべき点として、「他の業態に比べて店舗の売却額が高額になるわけではない」ことに注意が必要です。もちろん数店舗運営の美容室であれば仕組みが整っているので高い値段が付くケースがあります。しかし、特に個人運営の店舗の場合、売却が高額になるわけではありません。

理由は単純であり、M&Aを実施したとしても今後の売り上げを維持できるかどうか微妙だからです。

美容師の場合、その人(美容師)にお客さんが付いているケースが多いです。つまり、お客さんは店舗で選んでいるわけではなく、人(美容師)で選んでいることが多いです。これが男性客ではなく、女性客となるとその傾向はさらに強くなります。

そのため、個人店舗の美容室オーナーが辞めて事業承継するとき、「いつもオーナーにカットやパーマをお願いしていたお客さん」はその瞬間に離れてしまいます。

美容室の場合、店舗のブランド力や商品開発力はそこまで重要なわけではありません。それよりも、接客する美容師のほうが重要になります。そのため、そうした美容師を何人も抱えている店舗であれば価値が高まるものの、個人店舗だとM&Aでの価値はそこまで高くはならないのです。

ただ、個人店舗であったとしてもヘアサロンには既に必要な機器が揃わっています。また、立地のよい場所に店舗を構えている場合は付加価値が上昇します。そういう意味でM&Aによる事業承継に価値があります。

・立地の悪い美容室は売却できない

なお、美容室の中には昔から運営しているため、「何でこんなところに?」という立地のヘアサロンが存在します。住宅街の分かりにくい場所でポツンと経営しているケースはそこまで珍しくありません。

ただ、さすがにこのレベルになると売るのが難しくなります。リフォームするにしても、立地が悪いと人が入ってきません。完全に美容師オーナーの人柄によって成り立っている形態であるため、買い手がつかないのです。

こうした例外はあるものの、そうでない場合はM&Aによる事業承継まで含めて視野に入れるようにしましょう。

売却金額に応じて法人化を行う

なお、節税の観点では法人化することも考えましょう。数店舗を運営しており、既に法人化している場合なら問題ないものの、個人事業主の場合は事業承継を見据えて法人成りしておくのです。

M&Aの場面において、法人化しておくことには大きな意味があります。

例えば、数店舗を経営している美容室オーナーがいるとします。このときの売却額が5,000万円だった場合、個人事業主だと個人でお金を受け取るので半分が税金です。つまり個人所得が5,000万円の上乗せとなり、半分の2,500万円が税金で取られるようになります。

それに対して、法人として売却する場合は税率が20%で一定です。株式で儲けたお金は分離課税が適用され、役員報酬など通常の所得とは分けて考えます。「会社を売る=株式を売る」であるため、税率20%なのです。

例えば法人化した後に売却すれば、「5,000万円 × 20%(税率) = 1,000万円」が税金であり、手元には4,000万円が残ります。同じようにM&Aを実施するにしても、やり方が違うだけで残るお金の金額がまったく違うものになります。

・売却額が少ない場合はそのまま事業譲渡

ただ、一店舗だけ運営している個人事業主など、売却金額がそこまで大きくならないケースもあります。

売上や利益が多ければ1店舗でも1,000万円以上で譲渡することができます。ただ、300~500万円ほどの金額になる場合、わざわざ法人化した後に売却するメリットは少ないです。M&A会社への手数料まで考慮すると、そこまでお金が残るわけではなく、所得が低い場合は所得税もそこまで高くはなりません。

法人として売却するメリットは税率20%の恩恵を受けられるからです。そのため、店舗数が多くなく売却金額がそこまで高くならない場合、法人化などは考えずそのまま事業譲渡すれば問題ありません。

美容師が考えるべき相続対策は異なる

自らビジネスをしている人だと、生前贈与や相続の一環として、必ず事業承継の問題が起こります。その中でも、美容師は独立している人が非常に多い特殊な業界であり、同時に事業承継に悩む人が多くなります。

親族内に後継者がいないケースは多く、そうしたときは社員美容師を育てて店を譲ることを考えましょう。独立を考えている人が多いため、社員美容師に店舗を譲る提案をしたときに快く受け入れてくれることはよくあります。

また同時にM&Aを考える必要があります。店舗数が少ない場合はそこまで高額にならないかもしれませんが、引退した後の資金としてそれなりに大きなお金を手にすることができます。

ヘアサロンの事業承継・M&Aではこうしたことを意識して実行に移す必要があります。美容業界ならではの特徴があるため、これらを理解したうえで他の人へ事業を引き継ぐようにしましょう。

法人・個人事業主の事業継承で、一瞬で3,500万円以上を節税する税金対策

法人や個人事業主では、いつかの時点で必ず事業承継する必要があります。このとき問題になるのは「誰にどの事業を移すのか」「節税したうえで事業譲渡する」ことに尽きます。

その中でも特に節税は重要であり、ほとんど儲かっていな事業主でも「事業価値が1億円以上」となるのは普通です。このときき、そのままの状態で生前贈与すると5,000万円以上の税金となり、事業承継がきっかけで後継者は破産します。

そこで税金対策を講じることにより、事業承継で発生する無駄な税金を抑えなければいけません。親族トラブルが起こらないように調整するのは当然として、早めの節税対策が必須になるのです。

「税金をゼロにする優遇税制」「会社価値を一気に6割減にできる法人保険」など、事業承継では無数のスキームが存在します。そこで、事業承継に特化した専門家を紹介します。これにより、高額な節税を実現しながらもスムーズな事業の引き継ぎが可能になります。

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