不動産を保有している人だと、どうしても相続税評価額が高額になってしまいます。そのため、生前贈与によって相続対策をしたいと考える人は多いです。また生前贈与をすれば、特定の親族に対して土地・建物を渡せるようになります。
ただ不動産の贈与をするとき、必須になる手続きとして登記があります。不動産というのは、法律上でも誰の所有物であるのかについて明記しなければいけません。
それでは、こうした登記をするときの必要書類としては何があるのでしょうか。自分で登記を行うことはできるのでしょうか。司法書士などの専門家へ依頼するとなると、いくらの費用になるのでしょうか。
ここでは「不動産を生前贈与するときの登記の考え方」について解説していきます。
もくじ
自分で不動産登記申請するときの手続き
法的な手続きになるため、当然ながら登記は非常に複雑な過程を踏むようになります。そうしたとき、手続きとしては以下のことを実行する必要があります。
- 必要書類を集める
- 税金の確認
- 贈与契約書の作成
- 法務局へ申請
登記は行うことが多いです。そのため、何をするべきなのか事前に理解しなければいけません。
必要書類をすべて集める
自分で登記をする場合、必要書類を集めなければいけません。司法書士などの専門家へ依頼する場合であれば勝手に必要書類を集めてくれるので特に何も考えなくていいですが、自分で行う場合は書類の収集から始めるようにしましょう。
このとき、当然ながら贈与対象の不動産の登記簿謄本(登記事項証明書)が必要になります。以下のような書類になります。
登記簿謄本(登記事項証明書)に「不動産の所有者」「所有することになった登記原因」「いつから所有しているのか」などが詳細に記載されるようになります。
さらに加えて、以下の書類を集めるようにしましょう。
- 贈与者の印鑑証明書
- 譲り受ける人の住民票
- 固定資産評価証明書
もちろん登記の内容によって必要書類は違ってきます。ただ、一般的にはこうした書類が必要になってくるというわけです。
贈与税、不動産取得税、登録免許税の確認をする
こうして不動産の登記に必要な書類を集めたら、次は税金の計算を考える必要があります。贈与において、税金は最も多いトラブルの一つです。
贈与税については、非常に高額になりやすいです。特に不動産の場合、現金のように分けての贈与が難しいです。そのため必然的に高額の贈与になってしまいますが、多額の贈与税支払いがあることは理解しましょう。
例えば1,000万円を贈与する場合だと、贈与税は231万円にもなります。毎年、少しずつの贈与だと非常に税率が低くなる贈与税であるものの、高額な贈与だと非常に多くの税金支払いが発生するようになると考えましょう。
なお贈与税の支払いが発生する場合、以下のような書類の作成・申告が必要になってきます。
これに加えて、不動産取得税と登録免許税の支払いが発生します。不動産取得税は不動産価格の3~4%です。また、登録免許税は不動産価値の2%です。そのため、これらの税金も高くのしかかります。
不動産の贈与をするのはいいものの、税金のことを考えておらず、後で高額な贈与税や不動産取得税などの支払い請求を受けることになり、路頭に迷う人は多いです。ただ、不動産登記のときは税金のこともセットで考えるようにしましょう。
贈与契約書を作成する
それだけでなく、土地・建物の贈与では贈与契約書を作成することになります。現金での贈与であれば、銀行振込をするだけで問題ありません。ただ不動産だと、贈与契約書を作成するのが基本です。
どこかに贈与契約書の定型書式が存在するわけではないため、自分で登記申請する場合はあなたが作らなければいけません。あなたの状況に合わせて贈与契約書を作りますが、例えば以下のようになります。
ここでは非常に簡単に記しましたが、実際にはもっと詳細な内容の贈与契約書を作成することになります。
法務局へ登記申請し、名義変更する
こうしてすべての書類を揃え、税金について計算したのであれば、ようやく法務局へ出向いて登記申請することになります。
このとき重要なのは、「不動産登記は、どの法務局でも受け付けてくれるわけではない」ことです。対象の不動産を管轄する法務局で登記申請しなければいけません。そのため、対象の不動産から遠い地域に住んでいる場合、管轄する法務局へ移動して申請する必要があります。
司法書士などの専門家であれば、郵送などで済ませることになります。ただ素人が自分で登記を行うとき、「法務局の窓口に出向かず申請手続を完了する」のは、不可能なほど難易度が高いです。そのため「自宅と法務局を何度も往復することで、ようやく登記申請が完了するようになる」と考えましょう。
対象の不動産とあなたの住んでいる場所が近い場合は大きな問題になりません。ただ、そうでない場合は交通費が非常に高くなってしまいます。
自分では難解なので専門家への依頼が普通
ここまで述べてきた通り、「登記する」とはいっても自分で行うとなると非常にハードルが高いです。これが遠く離れている不動産の生前贈与だとさらに悲惨であり、交通費だけで非常に高額になってしまいます。
そのため特別な理由がない限り、自分自身で登記申請する人は現実的にいません。司法書士などの専門家へ依頼することになります。
また実際のところ、あなたの状況に合わせた贈与契約書を作成する必要があります。また、自分で行う場合は税金の計算も自らやらなければいけません。そうして意味のない契約書が作成されたり、税金計算がめちゃくちゃで後で高額な税金を取られるようになったりすることが頻繁に起こります。
自分で行うとむしろ損をしやすいのは、当然ながら理由があるといえます。
また生前贈与の場合、一つの年に一括で贈与すると非常に高額な税金を課せられます。そうしたとき持分の贈与も可能であるため、毎年少しずつ持分の贈与をしたいと考えるケースもあります。ただ、そうなると契約書や登記申請の内容はより複雑になるため、素人だと不可能なほど登記作業は高度になります。
費用や税金面の理由から、不動産の生前贈与はしないほうがいい
ここまで、生前贈与での登記について解説してきましたが、実際のところ土地・建物については生前贈与しないほうが圧倒的に得をします。不動産だと相続のほうが有利であり、よほどのことがない限りは生前贈与を避けるべきです。
実際のところ自分で登記申請するのはハードルが高いため、毎年の贈与のたびに司法書士への報酬支払いが発生します。
このときの費用は贈与ごとに10万円ほどになるため、名義変更の料金はそれなりに高額になります。
一括の贈与だと贈与税が高額になり、毎年少しずつの贈与でも名義変更の登記費用がかさみます。その結果、不動産の生前贈与については、相続で引き継ぐときに比べて圧倒的に不利になります。
特例を利用しても土地・建物の贈与は損をする
ただ中には、以下の制度を考える人もいます。
- 相続時精算課税:2,500万円の非課税
- 夫婦間贈与:2,000万円の非課税
生前贈与では特例が存在しており、こうした制度を利用することで非課税にて生前贈与することが可能になっています。一見すると、高額なお金が生前贈与で非課税になるので優れているように思えてしまいます。ただ、得をするどころかむしろ損をします。
まず相続時精算課税については、確かにその場では2,500万円の生前贈与分が非課税になるものの、相続時には「相続時精算課税を適用させていた部分について、相続税に加えて計算する」ようになります。つまり、節税効果がゼロです。
それにも関わらず、相続時精算課税を利用すると「毎年110万円の贈与非課税枠を利用できない」「小規模宅地等の特例による、土地価格の80%減額を相続時に利用できない」などの状況に陥ります。そのため、ほぼ確実に損をします。
同じことは夫婦間で認められている「不動産の2,000万円の非課税」にもいえます。これについては、確かに2,000万円までなら不動産が贈与時に非課税です。
ただ相続だと「不動産取得税がゼロ」「登録免許税が5分の1」と優遇されているものの、この生前贈与の特例制度を利用していると、これらを利用できません。また、「小規模宅地等の特例による土地価格の80%減」も利用できません。
さらにいうと、配偶者間の相続は1億6,000万円まで非課税であり、よほどの富裕層でない限りは元々が無税です。それなのに夫婦間で生前贈与すると、無駄に税金が高くなる仕組みになっています。
こうしたさまざまな理由から、たとえ特例を用いたとしても土地・建物の生前贈与は不適だといえます。
生前贈与の不動産登記について、どのように手続きを進めればいいのか調べている段階であるのなら、むしろ「不動産登記はやめるべき」だといえます。素人が自己流で相続対策をすると、間違った方法によってほぼ確実に損をしますが、その一つに不動産の生前贈与があるのです。
土地・建物の生前贈与の登記は手続きしないのが正しい
ここでは、相続対策で非常に重要になる不動産登記について解説してきました。賃貸用マンションでなくても、自宅(持家)を保有している人は多く、そうなると高額な相続税が発生するようになります。
こうした生前の相続対策で、非常に重要な要素として生前贈与があります。ただ、生前贈与は「何でもいいから行えばいい」というわけではありません。場合によっては損をすることがあり、その代表例が土地・建物の生前贈与になります。
「登記申請の手続きを、どのように進めればいいのか」について調べている段階なのであれば、「生前贈与は行わないのが正解」であることを理解し、いますぐ中止するようにしましょう。そうしないと損をするからです。
相続対策による節税というのは、正しいやり方があります。そのため、必ず相続の節税に詳しい専門家と相談し、本当の意味で優れた生前対策を実施するようにしましょう。
生前対策や相続税申告の場面では、依頼する専門家が非常に重要になります。相続に特化し、さらには節税や不動産、株式などにも精通した専門家に依頼しないと相続税が非常に高額になるためです。
実際のところ、正しく相続対策を講じていないため多くの人が損をしています。
ただ、相続に大きな強みをもつ専門家を厳選したうえで相談すれば、通常よりも税金が1,000万円も違うのは普通です。また、当然ながら実務経験が多く知識のある専門家に依頼するほど、相続後の争いも少ないです。
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