親から引き継ぐ財産としては、現金に限らず土地・建物もあります。ただ、このとき負の遺産となってしまうものが存在します。代表的なものとしては、田舎の家・土地や別荘などがこれに該当します。
持ち家としてその場所に住んでいる場合、土地・建物を相続するのは非常に重要です。ただ、住んでいない遠くの土地を相続したとしてもうれしくありません。むしろ、いらない土地を引き継ぐことになるので無駄が多いです。
実際、あなたにとって必要ない土地を親が保有してたり、別荘があったりする場合、無駄に税金(固定資産税)が毎年課せられます。そのため節税を考えたり、不動産の活用を実施したりしなければいけません。
そこで、どのようにして田舎の土地を有効活用して相続税対策をすればいいのか解説していきます。
もくじ
負の遺産になりやすい、いらない田舎の土地や別荘
通常だと財産を引き継ぐことはうれしいですが、必要ない相続財産も存在します。それが、田舎の家や別荘などです。近くに住んでいるならまだいいですが、遠くに住んでいるためにメンテナンスすることもできず、野放しになっているケースも多いです。
こうした負の遺産であっても、当然ながら相続税を課せられるようになります。
どれくらいの相続税が必要なのかについては、固定資産税評価額から計算していきます。以下のような通知が必ず届けられており、土地や建物の財産評価額が記載されています。
この金額が非常に小さい場合、そこまで気にする必要はありません。ただ、田舎の家や別荘であってもそれなりに大きな金額になる場合、相続税はそれなりに高額になります。
重要なのは、「売ることがなかなかできないにも関わらず、相続税を現金で支払わなければいけない」ことです。つまり、土地や建物の評価額が無駄に高いと「相続税としてお金を払わなければいけないのに、売れないので相続に必要なお金を作れない」ことになります。
これが、田舎の土地や別荘を相続すると負の遺産になりやすい理由です。
不動産所有による毎年の固定資産税は高額になる
また、不動産を所有することによる毎年の固定資産税もそれなりに高額になりやすいです。固定資産税率は決まっており、固定資産税評価額の1.7%です。
例えば、土地や建物の評価額が合計で2,000万円だったとします。この場合、「2,000万円 × 1.7% = 34万円」となります。これだけ高額な固定資産税が毎年、課せられるようになります。
一軒家などの宅地であれば税金が少なくなる特例はあるものの、いずれにしても田舎の田畑や山林、一軒家・別荘を含め不動産を所有していると税金を取られるようになります。このときの固定資産税評価額が高額になるほど、多くのお金が出ていくようになります。
固定資産税は高額になりやすいですが、不動産所有に対する税金なので生活を大きく圧迫するようになります。
田舎の田畑や山林、一軒家は維持費・管理費がかかる
また、基本的に人が近くにいてメンテナンスをしていない場合、荒れ放題になるので維持管理費がかかるようになります。
空き家だと建物がボロボロになりますし、土地についても草が生え放題になります。以下のような状況になってしまいます。
要は、いつ建物が崩れてもおかしくない状況になりますし、田畑を放置すると草が人間の背の高さを超えるようになります。そうなると、当然ながら近隣住民から苦情がきます。しかし草刈りを依頼すると、一回につき4~6万円ほどを要求されます。
遠く離れた地にある土地が負の遺産になるのは、こうした維持費によって、保有しているだけで勝手にお金が消えていくようになるからなのです。
いらない田舎の土地や一軒家・別荘を活用する方法
実際に自分が住んでいたり、近くにいたりするのであれば、土地・建物を相続することは重要になります。ただ、田舎のいらない土地や一軒家・別荘を相続する場合は微妙になってしまいます。
「先祖代々の土地だから」という理由で毎年高額な税金や維持費を払い続けてもいいのであれば問題ないですが、多くの人はそのような余裕がありません。貯金500万円ほどであれば、無駄な不動産を所有することでお金が数年で底をつくようになります。
そこで、いらない一軒家を有効活用したり、売ったりすることを考えなければいけません。このとき、以下のような対策があります。
他人に貸して賃料収入を得る
直前まで親が住んでいたのであれば、少なくとも一軒家の状態はいいはずです。このとき、実家が遠く離れた場所にあって住む予定がない場合、できるだけ早く他人に貸して賃料収入を得るようにしましょう。これが、相続財産を負の遺産にしない最も有効な方法になります。要は、不動産オーナーとなるのです。
一般的に大家というと、賃貸マンションやアパートを想像します。ただ、一軒家の大家もたくさんいます。
家族で賃貸に住むことを考えるとき、マンションではなく一軒家の借家を検討する人は多いです。家族で住むとき、狭い賃貸マンションではなく一つの家を借りるのです。賃貸なので当然ながら新築である必要はありません。相続後、そのまま貸し出して問題ないです。
もちろん、親の死亡後は家の中を整理しなければいけませんしクリーニングも必要です。ただ、その後に不動産仲介会社と掛け合い、住む人を見つけてもらうようにすれば、負の遺産になるどころかお金が入ってくるようになります。
また、人が住まなくなるからメンテナンスされなくなり、建物にカビが生えて庭には大量の草が生い茂るようになります。そこで賃貸として貸せば、そうしたことを気にする必要はありませんし、無駄な維持費もかからなくなります。
・家具付き物件として貸し出せる
しかも、このときは家具付き物件にできます。家の中に残された家具や電化製品について、そうじすればそのまま使えます。廃棄処分する必要はなく、残しておけば問題ありません。
そうなると、家具付き物件として貸し出すこともできます。家具付きだと家賃相場が高くなるため、通常よりも高めの賃料収入を得ることも可能になっています。
・別荘を含め、民泊で利用してもいい
また、観光地であったり交通の便がよかったりする立地の場合、民泊として貸し出しても問題ありません。田舎の土地であっても、周囲が温泉であったり、駅から近かったりすれば民泊利用に便利です。
そこで賃貸の不動産仲介会社に相談すると同時に、民泊としても出してみるといいです。
例えば軽井沢にある別荘を相続する場合、どうしても負の遺産になりやすいです。ただ、民泊として貸し出せばそれなりに高額な収入を得られます。以下のように、一軒家であれば一泊あたり2万円以上が基本です。
このように、不動産を活用してお金を生み出す手法がいくつも存在します。ここに述べた以外にも、「駐車場にする」「トランクルームにする」などいくつも方法があります。
「田舎にある家・別荘なのでいらない」と考えるのではなく、大家としてお金を生み出すことができないかを考えるといいです。
売れる場合、相続税を支払った後に売る
ただ、一軒家が建っているわけではなく山林や土地を相続した場合、このように貸し出すことはできません。また、不動産大家になるつもりがない人もいます。
その場合、どうすればいいのでしょうか。これについては、売却を考えます。田舎の実家だと、場所によってはなかなか買い手が見つからないことがあります。ただ、これを嘆いても仕方がないので土地・建物の売買仲介をする不動産業者へ早めに相談し、頼み込むようにするといいです。
注意点としては、売るタイミングに気を付けましょう。まだ親が生きている段階で売ってしまうと、現金の全額に対して相続税を課せられます。ただ、不動産だと実際の金額よりも低い相続税評価額となります。一般的には、「土地:取引価格の約70%」「建物:取引価格の50~60%」になります。
そのため、相続後に土地や建物を売ってしまったほうが多くの現金を手元に残せるようになります。
例えば田舎の実家や別荘を売って3,000万円を手にした後、親が死ぬと3,000万円に相続税が必要です。一方で実際には3,000万円の値段で売れるにしても、不動産であれば「2,000万円の価値としてみなして問題ない」となります。
その分だけ支払う相続税が少なくなるため、売るときは相続発生後のほうが節税対策となります。
どうしても売れず、お金がない場合は物納となる
ただ、理想は「相続税を支払った後に家を売ること」だと分かっていたとしても、そもそも相続税を支払うだけのお金を保有していないことがあります。また、買い手がなかなか見つからないことも多いです。しかも、不動産を持ち続けていると無駄に維持管理費がかかってしまいます。
そうしたとき、「所有する不動産によって相続税を支払う」という方法があります。
通常は現金一括で相続税を払わなければいけません。ただ、現金で支払うことができず、延納(期日を過ぎた後に支払うこと)でも難しい場合、物納という手段を取ることになります。
ただ、現金での財産があるのに物納を選択することはできません。お金が手元にない場合のみ選択できます。
また、物納を選択できる期限は決められていますし、所有権について争っている不動産については物納が認められません。国としては現金で納めてもらうほうがいいため、物納のような特例をあまり使ってほしくありません。そのため相続に詳しい税理士に相談しなければ物納は難しくなっています。
自治体へ寄付するのは難しい
ちなみに、中には「いらない田舎の実家や別荘を自治体に寄付できないのか」と考える人もいます。ただ、自治体が土地や建物を引き取ってくれる確率は非常に低いです。
地域の公園などに有効利用できる場合なら問題ありませんが、多くの土地はそのようにはなっていません。利用目的のハッキリしない不動産を引き取ってはくれないのです。
これは当然であり、下手に使い道のない不動産を受け取ってしまうと固定資産税による税収が少なくなってしまいます。そのため、自治体へ寄付をするにしても受け付けてくれる確率が非常に低くなっているのです。
当然ながら、利用目的が明確な不動産だと価値が高くすぐに売れるので、自治体への寄付を考える人はほぼいません。つまり、自治体へ寄贈する選択は基本的にないと考えたほうがいいです。
不動産の相続放棄は得策ではない
しかし、賃貸にも出せず売ることも難しく、さらには自治体への寄付すらできないとなると、最終手段としては相続放棄を考えるようになります。無駄に固定資産税や維持管理費が出続けるのであれば、不動産相続を放棄してしまったほうがいいと考えるのです。
ただ、いらない田舎の土地や別荘を相続放棄するとなると、同時に不都合なことも起こるようになります。それは、「すべての相続財産を放棄しなければいけない」ことです。
最もいいのは、「現金だけ相続して、不要な不動産は相続放棄する」ことです。ただ、このようなことは認められていません。相続放棄する場合、不動産に限らずあらゆる相続財産を放棄しなければいけません。
そのため、本当に親の全財産の相続放棄をしても問題ないのかという問題があります。
相続放棄後も空き家の維持費が必要になる
さらに問題なのは、相続放棄によって固定資産税の支払いはなくなるものの、不動産の管理費はずっとかかり続けるようになります。
相続人の全員が相続放棄した場合、相続権が次順位に移ることになりました。そうして次の人も全員が相続放棄し、これが続いていくと最終的には国が不動産を管理することになります。ただ、実際のところここまでいくケースはほとんどありません。
また民法では、「たとえ相続放棄したとしても、次の相続財産管理人が選定されるまでは相続財産を管理しなければいけない」となっています。つまり、相続放棄後も不動産はあなたが管理を続けなければいけません。
これが、固定資産税の支払いはなくなるものの、不動産の相続放棄したあとも維持管理費が必要になる理由です。空き家であれば荒れ放題となるため、草刈りなどの維持費が必要になります。結局のところ、相続放棄したとしても維持管理費から逃れることはできないのです。
不動産の相続放棄が微妙なのは、こうした理由があるからです。現金であれば、管理するとはいっても銀行口座に眠らせておくだけで問題ありません。しかし、土地や建物だと維持管理費が発生するので結局のところお金が減っていくようになります。
相続放棄したい土地について、相続したいという別の人が現れることは稀です。そのため田舎の家がある場合での相続放棄はかなり微妙であり、結局のところ放棄せずに相続するケースが多いです。
不動産の有効活用か売るのが一般的
このように見ていくと、たとえ寄付・譲渡や相続放棄という選択肢があるとはいっても、現実的に無理だったり意味がなかったりすることが分かります。
そのため、いらない田舎の土地・建物や別荘を相続したときに考えるべきは「大家として収入を得られないか」「売れないか」の2つに絞られることが分かります。
もちろん中には、田舎の土地なので売りたくても売れないという状況の人がいるかもしれません。ただ、そうした状況であっても早めに相続に強い税理士と相談することで相続税対策を練ったり、土地をどのように活用するのかを考えたりしなければいけません。
そうして田舎の家や別荘をうまく賃貸させたり、売ったりすることを考えましょう。
いらない不動産の相続は負の遺産になりやすいです。相続放棄ですら微妙になるため、早めに親の資産をどのように取り扱うのか専門家と相談するといいです。
生前対策や相続税申告の場面では、依頼する専門家が非常に重要になります。相続に特化し、さらには節税や不動産、株式などにも精通した専門家に依頼しないと相続税が非常に高額になるためです。
実際のところ、正しく相続対策を講じていないため多くの人が損をしています。
ただ、相続に大きな強みをもつ専門家を厳選したうえで相談すれば、通常よりも税金が1,000万円も違うのは普通です。また、当然ながら実務経験が多く知識のある専門家に依頼するほど、相続後の争いも少ないです。
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