死亡して相続が発生したとき、お金が返ってくることがあります。先払いしていたお金が返金されたり、国からの助成があったりして、還付金が支払われるようになります。
ただ、このとき気になるのが相続税です。返ってきたお金について、税金を支払わなければいけないのか心配するのです。これについては、被相続人(亡くなった人)が支払ったお金が返ってくる場合、相続税の対象になります。
特に多いのが医療に関わる還付です。事故ではなく高齢にて病気で死亡する人だと、高確率で直前に医療を受けることになります。そうしたとき、医療保険や高額療養費、介護保険料などの取り扱いを理解しておかなければいけません。
そこで、ここでは「どのように考えて亡くなった方の還付金を受け取り、相続税を支払えばいいのか」について解説していきます。
もくじ
国民健康保険料や後期高齢者医療保険は相続税の対象
実際に被相続人が死亡したとき、それぞれの市町村に届出をすることで返ってくるお金があります。こうしたものに、以下のようなものがあります。
- 国民健康保険料
- 後期高齢者医療保険料
サラリーマンとして働いていた人であっても、定年退職後は国民健康保険へ加入することになります。そうなると、国民健康保険料を支払うようになります。
またより年齢が上昇すると、後期高齢者医療保険へ加入することになります。同じ医療保険にはなりますが、後期高齢者医療保険料を納めることでより低い負担割合にて医療を受けることが可能です。
このとき、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料については還付の対象になります。
これら国民健康保険料や後期高齢者医療保険料については、生前に故人が納めたお金になります。つまり、死亡した被相続人の財産だと考えることができます。単にお金が返ってきただけのため、相続税の対象になります。
死亡時に介護保険料も還付金で戻ってくる
また、医療保険を支払うと同時に介護保険料も納付していることになります。年齢が高いと、自動的に介護保険料も払うことになるのです。
そうしたとき、国民健康保険料や後期高齢者医療保険料が還付で戻ってくるのと同じように、介護保険料についても死亡後は払い過ぎた分が還付金として戻ってくるようになります。
介護保険料は故人が生前に支払ったお金であり、故人の財産と考えることができます。そのため、還付で戻ってきた介護保険料は相続税の対象になると考えましょう。
払い過ぎて還付された高額療養費も相続税
また医療の場面でいうと、高額療養費も還付の対象になります。
日本では高額すぎる医療費を支払った場合、高額療養費として後でお金が返ってくるようになるのです。特に入院して高額な薬を利用したときなど、一時的に病院へ高額なお金を支払うことになりますが、それが後で返ってくるのです。
その人の所得によって高額療養費の基準は異なります。月5万円や月10万円など、「どれくらいの金額について自己負担すれば高額療養費の上限に達し、お金が返ってくるのか」が変わってくるのです。ただ高額療養費制度により、高い医療費について自己負担したら、後で上限との差額が還付(返金)されます。
相続の観点からいうと、このとき還付されるお金についても生前に故人が支払った現金になります。つまり、故人の財産といえます。そのため、還付金は相続税に含めて計算しなければいけません。たとえ、家族が代わりに医療費を支払っていたとしても還付金は相続税評価額に含めます。
お金を納付した場合は控除となる
なお、ほとんどは保険料が還付されるケースとなるものの、中には医療保険料を滞納しているなどの場合、お金を納付しなければいけないことがあります。このケースでは、お金を支払った分だけ相続税対象額から控除できるようになります。
基本的には起こらないものの、生前に保険料支払いのお金を滞納している場合、還付ではなくお金を支払わなければいけない事態が発生すると考えましょう。
これら医療保険料などの負担すべきお金は税金と同じような性質のものであり、納付は国民の義務といえます。そのため、むやみにお金を取られているわけではなく、借金と同じようにお金を支払うのが当然だと考える必要があります。
ただ借金を相続すると、その分だけ相続財産から控除できるのと同じように、お金の納付義務が発生した場合はその金額分だけ相続財産から控除できるというわけです。
死亡日以降に徴収・還付されたお金は対象外
なお注意点として、死亡日(相続発生時点)よりも後に保険料などを徴収され、還付で戻ってきたお金については相続税の対象になりません。二重課税になるからです。
多少の例外はあるものの、相続では死亡した時点の財産総額で税額を算出するようにします。ただ実際のところ、死亡届の提出が数日遅れるなどして銀行口座から自動的に保険料が引き落とされるケースがあると思います。
そうしたとき、死亡時点の財産で相続税を計算するにも関わらず、死亡後に支払って戻ってきたお金についても税金を課す場合、二重課税になるので違法です。
これを防ぐため、死亡日以降に徴収・還付されたお金は相続税の対象外になることは理解しましょう。
医療の還付金で大きな影響はない
ただ実際のところ、これら国民健康保険料や後期高齢者医療保険料、介護保険料、高額療養費の還付金が相続税に大きく関わるかというと、そこまで大きな影響はありません。
相続税では、最低でも3,600万円の控除があります。つまり、財産が3,600万円以下の人が死亡した場合だと無条件で相続税ゼロです。こうした控除金額に比べると、数万円や数十万円ほどの医療に関する還付金は誤差の範囲内だといえます。
相続税で本当に考えるべきは「数百万円、数千万円レベルの節税」になります。そのため、実際のところ医療費に関わる還付金について神経質になる意味はありません。
ただ税金を正確に納付するのは納税者の義務です。そのため、相続税を支払う必要がある人の場合、医療保険や高額療養費などの還付金を含めて税理士に関係書類を渡すことで、確実に相続税評価額に含めてもらうように留意しましょう。
医療保険や高額療養費の還付金の取り扱いを理解する
死亡によって相続が発生したとき、必ず死亡届を提出しなければいけません。このとき、前もって支払っていた以下のお金が戻ってくるようになります。
- 医療保険料
- 後期高齢者医療保険料
- 介護保険料
また医療費の自己負担額が大きい場合、高額療養費も還付されます。このときのお金については、相続税の対象になります。故人の財産から支払っているお金であるため、相続税の判定になると考えるようにしましょう。
相続税の額にはほとんど影響しないものの、正確な申告をするために医療に関する還付金の取り扱いを理解するのは重要です。還付金には相続税がかかることを理解したうえで、正しく納税するといいです。
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