上場株式を保有している人はたくさんいます。そうした人の場合、死亡したときは当然ながら多額の相続税を課せられるようになります。現金と同じように、株式(有価証券)についても当然ながら税金がかかります。

そうしたとき、株式について生前贈与を実施するようにしましょう。上場株式について、現金を贈与するよりも有利な内容になっています。事前に積極的な贈与をすることで財産を減らし、相続税を少なくするのです。

ただ現金での贈与とは異なり、少し面倒な手続きをしなければいけません。

それでは、どのように考えて有価証券の生前贈与をすればいいのでしょうか。ここでは、上場株の生前贈与で節税する方法について解説していきます。

上場株式の評価方法(評価額)は4つ存在する

株式には非上場株式(自社株)と上場株式の2つがあります。非上場株式については、会社経営する人がもつ自分の会社の株になります。場合によっては他社の非上場株式を保有することはあるものの、基本的には自社株が非上場株式になります。

ただ、そうした非上場株式ではなく、誰でも株式を購入できるケースがあります。それが上場株式です。多くの人が保有する有価証券が上場株式になります。

私の場合も上場株式を広く購入しています。特定の会社ではなく投資信託にはなりますが、世界株や先進国株、米国株などへ広く投資をすることで、以下のように世界中の上場株式へ分散投資しています。

ただ株の生前贈与だと、株式価値の低い時点を自由に選んで評価額を決めることができるようになっています。

通常だと、有価証券の生前贈与をするにしても「贈与した時点での株価」で計算しなければいけない気がします。しかし、実際にはそうではありません。以下の4つのうち、好きな株価を選んで贈与税の計算をして問題ないとなっています。

  • 贈与日の終値
  • 贈与日の当月の終値平均
  • 贈与日の前月の終値平均
  • 贈与日の前々月の終値平均

実際のところ、株価は月によって乱高下します。以下は私が投資している投資信託ですが、3ヵ月の間であってもこのように価格がまったく違うものになります。

そうしたとき、1ヵ月前や2ヵ月前の株価平均を基準に計算しても問題なく、最も低い株価になっているときを基準に株式評価額を算出できるのです。

暦年贈与で非課税にて移していく

このとき、実際の生前贈与の方法としては暦年贈与が基本になります。毎年110万円の非課税枠が認められており、この範囲内で贈与する場合は無税になります。

そこで保有している有価証券について、少しずつ贈与していくことになります。4つある株価評価額のうち、最も低い株式価値を活用し、110万円ギリギリで生前贈与するのです。

もちろん、1年のうちでどこが最も低い株式価値になるのかは不明です。ただ、3ヵ月ある中から最も低い株式価値を選べますし、将来の株価を予測するのはプロでも困難です。そのため「贈与したいと考えている時期」のうち、最も低い株式価値を選べば問題ありません。

なお、保有する上場株式が多い場合は300万円分の株式を贈与し、贈与税を支払ってもいいです。300万円の毎年の贈与であれば、贈与税は19万円(税率は約6.3%)で済みます。贈与税を支払う場合は申告が必要になるものの、低い税率になります。

値上がりが期待できるときは早めの株式譲渡が有利

なお株式については、早めの贈与をするほど有利になります。理由は単純であり、値上がりを期待できるほど、早めの株式譲渡をすると低い価値のときに株式を渡せるからです。

株式では空売りという方法があるものの、「株式を購入し、値上がりするまで保有しておく」という方法が最も一般的です。そうしたとき、値上がりを期待できない株であるならいますぐ売り払ったほうがいいです。値上がりがあると期待するから保有しているわけであり、そういう有価証券は早めに売却したほうがいいのです。

例えば、私が投資している株式(投資信託)にS&P500があります。米国株に連動する非常に有名な指標であり、以下のように長期的にみるとずっと成長し続けています。

世界的には、株価はずっと上がり続けています。そうしたとき、上場株式について価値が低い早い段階で生前贈与しておけば、「株価が高くなっている、相続時点での評価」にはならないので有利だといえます。

株式というのは、不動産のように値上がりするかどうか不明なわけではありません。そもそもが値上がりを期待して投資するのが株式なので、早期の生前贈与が有利なのです。

・孫への贈与が最も有利

なお投資は複利で資産が増えていくようになります。そうしたとき、子供よりも孫へ資産を渡すほうが複利による効果が強いです。つまり、最終的な資産運用額がまったく違ったものになります。

投資での資産運用財産について、子供ではなく孫への贈与を検討しても問題ありません。そうすれば、非常に高額な資産を親族へ残せるようになります。

同じ証券会社で口座開設し、株式移管で移す

ただ、上場株式について生前贈与が可能とはいっても、実際に贈与できなければ意味がありません。このとき、どのようにすればいいのでしょうか。

株式の贈与については、同じ証券会社で口座開設した後に生前贈与するようにしましょう。証券会社によって取り扱っている銘柄が異なります。例えば投資信託を贈与するにしても、同じ商品がその証券会社にあるか不明です。

しかし、同じ証券会社であれば確実に同一の商品が存在すると分かります。

そこで同じ証券会社で口座開設し、生前贈与にて株式を毎年移していくのが基本になります。そうすれば、生前贈与が完了します。

名義変更の手続きが面倒なのはデメリット

ただ現金の贈与とは異なり、名義変更の手続きが少し面倒なのはデメリットだといえます。現金の贈与であれば、銀行振込をすれば完了です。しかし、上場株式の移管なので銀行振込のような手軽な手続きだけで終わるわけではありません。

実際の贈与では、いま加入している証券会社に問い合わせるようにしましょう。またはネット証券であれば、「〇〇(証券名) 生前贈与」などで検索すれば情報が出てきます。

例えば、以下はネット証券での生前贈与に必要な書類(口座振替依頼書)です。

必要書類を取り寄せ、提出することで1~2週間ほどにて贈与が完了します。このとき毎年110万円の非課税枠に収まって無税なのであれば他に何もする必要がないです。また300万円分の株式を贈与したのであれば、それに応じた贈与税の支払いが必要になります。

書類の提出が必要なので手続きは少し面倒ですが、これらをすることで問題なく株の贈与が可能になります。

売却せずに移動させるのが税金面では正しい

なお、子供や孫への株式贈与するときに以下の手順でも問題ないのではと考える人がいます。

  1. 一度、株式をすべて売り払って現金に変える
  2. 子供などへ現金を贈与する
  3. 贈与したお金で再び株式を購入してもらう

ただ、株式を売却すると税金面で大きな損をします。株式の売却によって得た利益については、一律で約20%の税金を課せられます。例えば株の売却益が100万円の場合、「100万円 × 20% = 20万円」もの高額な税金支払いが発生します。

こうした税金を支払った後に、贈与したらさらに贈与税を課せられるようになります。つまり、ダブルで税金を払わなければいけません。それでは微妙なため、株式は売却せずにそのまま株式譲渡するようにしましょう。

もちろん、中には「ネット証券に口座を開設しておらず、手数料の高い証券口座を利用しているため、ネット証券など他の証券会社に移したい」と考えることもあります。その場合であれば、仕方ないので有価証券を一度売却する選択をしても問題ありません。

ただ、株式のまま生前贈与するときに比べると、売却するとどうしても税金面では不利になってしまうことを認識しましょう。

非上場株式(自社株)の贈与・節税とはまったく異なる

ここまで、上場株式の生前贈与を用いた節税対策について解説してきました。ここまでのことを理解すれば、非上場株式(自社株)の節税対策とはまったく異なると理解できます。

自社株の場合であれば、「配当を少なくする」「利益を減らす」「純資産を減少させる」など自分の会社にて株価対策することが節税で重要になります。

ただ上場株式の場合、上場している大企業の株式について値上がりを期待して保有するのが基本であり、あなたが経営する会社というわけではありません。そのため、生前贈与によって徐々に子供や孫へ渡すなど、一般的な節税対策をすることになると考えましょう。

株式譲渡をするにしても、上場株式と自社株では行うべきことがまったく違ってくるのです。

生前贈与で株式を渡し、節税対策をする

株式投資により、資産運用をしている人はたくさんいます。そうした人の場合、上場株式については事前に生前贈与すると有利です。

通常の現金を渡すよりも、株式のほうが有利になりやすいです。そのときの価値で評価額を算出する必要はなく、1ヵ月前や2ヵ月前の株価を評価額として活用することができます。また、株式は値上がりを期待して購入しますが、早めに名義変更することで低い価値の段階で株式譲渡できます。

もちろん現金の贈与に比べると手続きはどうしても面倒になります。同じ証券会社で口座開設したり、書類を送ったりすることで手続きをしなければいけません。

ただ、将来の相続税を減らすことを考えたとき、株式の生前贈与は非常に優れたやり方の一つだといえます。値上がりを期待して投資する上場株式(有価証券)だからこそ、早期の生前対策を実施するようにしましょう。

相続の専門家が違うだけで1,000万円以上も損する真実!

生前対策や相続税申告の場面では、依頼する専門家が非常に重要になります。相続に特化し、さらには節税や不動産、株式などにも精通した専門家に依頼しないと相続税が非常に高額になるためです。

実際のところ、正しく相続対策を講じていないため多くの人が損をしています。

ただ、相続に大きな強みをもつ専門家を厳選したうえで相談すれば、通常よりも税金が1,000万円も違うのは普通です。また、当然ながら実務経験が多く知識のある専門家に依頼するほど、相続後の争いも少ないです。

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