日本の相続税は非常に高額であるため、資産家であると何も対策しなければ多額の税金を取られることになります。そうしたとき、現金で不動産を購入することで節税することは相続税対策で頻繁に行われます。
そうした不動産の中でも、特にタワーマンションを購入することでの税金対策は非常に有効であるとされています。単なる課税逃れのために安易にタワーマンション購入をしても無駄ですが、正しい手法によってタワーマンション投資をすれば節税メリットを受けられるようになります。
やり方さえ間違えなければ、相続税・贈与税の圧縮に大きな効力を発揮する買い物がタワーマンションです。
そこでメリットやデメリット、さらには実際のリスクを含め、タワーマンション節税の仕組みについてわかりやすく解説していきます。
もくじ
不動産(土地・建物)だと相続時の評価額が減る
一般的な話をすると、現金で保有するよりも不動産としてもっておくほうが相続対策で有利です。これは、不動産だと評価額が低くなるからです。
例えば1億円の現金をもっている場合、1億円に対して相続税が加算されます。一方で1億円を不動産に変える場合、評価額が低くなります。
日本では土地と建物をそれぞれ別にして計算する決まりがあります。このうち、土地は路線価、建物は固定資産税の評価額で決定されます。
- 土地の評価の基準:路線価
- 建物の評価の基準:固定資産税の評価額
土地であると実勢価格(実際に売買するときの金額)の約70%の金額になるのが一般的です。例えば1億円で土地を購入したとしても、相続時には「7,000万円分の土地を保有している」と計算されます。実際よりも低い金額で算出されるのです。
同じように、建物についても実際の売買取引よりも価格が下がります。建物は固定資産税評価額によって決められますが、実勢価格の50~60%となります。そのため、実際の取引価格よりも低く見積もられるのです。
こうしたことから、資産を現金ではなく不動産として所有するだけで相続税対策になるのです。
もちろん、価値のない不動産を購入しても意味がありません。誰も住まない不動産を買ってしまい、結果として空室ばかりの赤字ではお金が減っていくだけです。ただ、きちんと投資をすれば不動産購入によって相続税や贈与税の対策ができるようになります。
タワーマンションだと固定資産税の評価額がより低くなる
ただ、一般的な不動産に比べてタワーマンションだとさらに評価額が低くなります。実際、国税庁が2011~2013年に実施したタワーマンションについて、「評価額は時価の3割ほど」と試算されています。
つまり、1億円のタワーマンションを購入したとしても3,000万円の価値にしかならないのです。1億円の現金であると、高額な相続税(贈与税)が課せられることになります。一方で資産3,000万円だけであれば、相続税はゼロです。タワーマンションを購入した瞬間に相続税対策が完了することは多いのです。
それでは、なぜタワーマンションだとこのように評価額が下がるようになるのでしょうか。これには、主に以下のような理由があります。
- 土地の持分割合が低くなっている
- 高層階になっても評価額が上がりにくい
それぞれの仕組みについて解説していきます。
土地の持分割合が少なく、相続・贈与での評価額が低い
相続や贈与のとき、路線価によって土地の評価額を算出することになり、一戸建て住宅であれば土地の評価額に対してそのまま税金が課せられます。例えば、土地の評価額(路線価での価格)が1億円の場合、1億円に対して税金を支払わなければいけません。
一方でマンションであると、「同じ土地にいくつもの家が存在する」ことになります。この場合、それぞれの家(部屋)の面積に応じて、土地の評価額を割って計算するようになります。
タワーマンションの場合、非常に多くの部屋が建物内に存在することになります。そのため、一戸あたりの持分割合(土地の総面積に対する、一つの家の面積割合)が非常に少なくなるのです。
例えば、タワーマンションに500戸があるとして、すべての部屋の面積が同じだとします。このとき、タワーマンション全体の土地の評価額が50億円だったとしても、一戸あたりの土地の評価額はわずか1,000万円です。
- 50億円 ÷ 500戸 = 1,000万円
たくさんの家が密集しているタワーマンションであると、その分だけ土地の評価額が低くなるため、結果として相続税や贈与税を大幅に圧縮できるようになるのです。
高層階で階数が上昇しても建物の価額が上昇しにくい
また、タワーマンションでは高層階になったとしても固定資産税の評価額が高くなりにくいという特徴があります。
当然ながら、タワーマンションでは階数が高くなるほど値段が高額になります。同じ建物であっても1階と50階では、価格が倍近も違うこともあります。ただ、このように高層階だったとしても固定資産税の評価額も同じように跳ね上がることはありません。
タワーマンションについては、同じ建物であっても20階以上の部屋については増税し、それよりも下にある部屋については減税するとなっています。
例えば20階の部屋が5,000万円の場合、固定資産税の評価額はザックリと以下のようになります。
- 40階の部屋(高層階):5,500万円
- 20階の部屋(中層階):5,000万円
- 1階の部屋(低層階):4,500万円
以前はどの階層であっても評価額は同じでした。ただ、それでは公平ではないと国税庁が動き、法改正があってこのように高層階になるほど建物(部屋)の固定資産税の評価額が高くなるように設定されました。
しかし、上記の通り高層階になっても固定資産税の評価額はそこまで高くならないことが分かります。
高い階層の部屋を購入したとしても、20階の部屋の評価額が5,000万円であれば、それが5,500万円ほどになるだけです。20階と40階では値段は大幅に異なります。そのため、結局のところ高層階の部屋を購入するほど「実際の購入金額に比べて、部屋の評価額が低くなる」という現象が起こるようになります。
タワマン節税(タワーマンションの節税)では高層階がメインで取引されます。これは、タワマン節税だと高層階のほうが相続税や贈与税でのメリットを受けることができるからなのです。
また、実際にタワーマンションを購入したことのある人なら分かると思いますが、たとえ同じ階数であったとしても北向きや南向きかによって値段が大きく異なります。値段が違っても、同じ階で面積が同じなら評価額は同一になります。
租税回避目的のタワマン節税は否認リスクがある
国税庁は過度のタワーマンションによる節税を規制しており、実際に法改正も行われています。ただ、節税のために新築や中古のタワーマンションを買うことは説明した通り有効であり、多くの人が相続税対策・贈与税対策として実施しています。
しかし、あくまでも自分が住んだり投資目的で購入したりするときにタワーマンションによる節税は有効です。誰からみても明らかな租税回避目的でタワマン節税をしても税務調査で否認されます。つまり、やり方を間違えると節税効果ゼロになります。
これについては、過去にタワーマンション節税を利用して過度の節税対策を実施し、否認された実例があります。このときの事例は以下のようになっています。
【2011年7月1日判決】 父親が病院へ入院し、死亡する1ヵ月前に父親名義でタワーマンション30階の一室を2億9,300万円で購入した。父親の死亡後、相続税を申告。不動産としてのタワーマンションの評価額は5,802万円だった。 その後、父親が死亡して10ヵ月後に購入したタワーマンションの部屋を2億8,500万円で売却。ただ、税務調査で否認された。 これを不服として国税不服審判所で争ったが、相続人が敗訴した。 |
節税とはいっても、明らかな相続対策としてタワーマンションを購入したとしても否認されます。特に今回の場合、死亡する直前に本人名義で不動産を購入しています。
また、マンションの部屋を取得して1年ほどで買値とほぼ同じ価格で売却しています。そのため、どう考えても単なる租税回避目的での節税対策だと分かります。
もちろんタワーマンションに限らず、不動産を単なる租税回避のツールとして利用するとあらゆる場合で否認されます。被相続人(亡くなる人)が死亡する直前に不動産を買い、相続後すぐに売却したとしても意味がないと考えましょう。
節税に強い税理士に相談せず、素人判断で過度の節税対策を実施したことで否認された典型的な判決となっています。
高級賃貸マンションとして相続開始後5年以上は運営するのが適切
それでは、どのようにすれば単なる租税回避目的での購入ではないと考えてもらえるのでしょうか。これについては、投資用マンションとしての購入だと認めてもらえるように実態を作らなければいけません。
先ほどの判例にあった事例では、以下の通りタワーマンションを取得価格の約20%で申請できています。
- 5,802万円(タワーマンションの評価額) ÷ 2億9,300万円(購入額) × 100 =19.8%
実際の評価額に基づいて申請しているため、これについては何も問題ありません。タワーマンションでは3割ほどの評価額になると記しましたが、今回のように相続・贈与に有利となる評価額になるケースはたくさんあります。狙い通りの節税を行えているため、ここまでは問題ありませんでした。
しかし、すぐに売却したので税務調査で否認されてしまいました。短い期間での売却の場合、否認リスクが高いというより、100%の確率で否認されます。
これを防ぐため、最低でも5年間は高級賃貸物件として他の人に貸し出すようにしましょう。節税目的ではなく、あくまでもビジネスとしての投資をするために購入したと言い張れる言い訳や実態を作らなければいけません。
タワーマンションは簡単に住む人が見つかる物件の一つです。利回りはどうしても低めですが、難易度の低い不動産投資になります。以下のように建物内にプールがあるなど、プレミアム感があってすぐに入居者が決まるのです。
または、実際に自分が住む場合でも大丈夫です。住む気がない場所のタワーマンションを購入した場合は賃貸として貸し出すしか方法はないですが、住んでも問題ないマンションなのであれば5年以上は住むといいです。
一般的に相続税が発生して5年以内が税務調査の対象になりやすいです。もちろん、5年が経過すれば確実に大丈夫というわけではないですが、それでもある程度の期間を高級賃貸マンションとして運用していたり、実際に住んでいたりするのであれば節税目的の利益圧縮ではないといえます。
実際、ビジネスとして不動産を運用し、赤字になってしまうために売却を検討する人はたくさんいます。そうしたとき、相続開始時に運用年数が5年以上あって実際に人へ貸し出している場合は租税回避ではないといえます。
先ほどの判例では、単にタワーマンションの部屋を購入しているだけであり、その部屋に訪れたことがないだけでなく、人に貸しているわけでもありませんでした。そのために否認されましたが、ある程度の年数を投資用マンションとして運営している実態を作れた場合、否認リスクは圧倒的に下がります。
賃貸として人に貸せば、さらに評価額が下がる
また、高級賃貸マンションとしてタワーマンションを購入するメリットは、評価額を一気に3割ほどに圧縮できるだけではありません。不動産として建物に人を住まわせば、相続時の評価額がさらに下がるようになっています。
これを借家権割合と呼びます。具体的には、相続時に賃貸として人が住んでいた場合は「土地の評価額が20%」「建物の評価額が30%」ほど減額されると考えましょう。
不動産を購入した場合、何もしなくても土地70%ほど、建物50~60%ほどの評価額になると記しました。ここから、さらに評価額が下がるのです。
相続税や贈与税の対策でタワーマンションを購入する場合、ついでに高級賃貸物件として人に貸すといいです。そうすれば毎月の家賃収入を得られるだけでなく、相続開始時の評価額についても大幅に圧縮できます。
自宅なら土地の評価額は8割減
なお、購入したタワーマンションを自宅として活用している場合、土地の評価額は8割減となります。
小規模宅地等の特例と呼ばれ、自宅を相続したときに330m2までなら土地の評価額が80%減となっているのです。固定資産税の評価額(建物の評価額)は変わりませんが、土地の値段は非常に少なくなります。
タワーマンションの場合、一戸あたりの持分割合は非常に低いため、100%の確率で330m2に該当します。
ただ、相続した家に住む同居家族がいなければ該当しないので注意しましょう。例えば親が一人で住んでおり、子供が独立して離れて住んでいる場合は適用されません。そのため、やはりタワマン節税で最も一般的なのは高級賃貸物件として他人に貸し出すことだといえます。
節税効果の高い新築・中古のタワマン節税を実施する
相続税や贈与税の対策を実践するとき、効果的な手法の一つがタワーマンションの購入です。実際の購入価格に比べて、圧倒的に評価額が小さくなるからです。購入価格に対して、評価額が3割以下になるのは普通です。
なぜ、多くの富裕層が相続対策でタワーマンションを買うのかというと、こうした仕組みがあるからなのです。
しかし、単なる租税回避目的で新築・中古のタワーマンションを購入してはいけません。相続の少し前に不動産を購入し、実際に相続を開始して1~2年で売るようであれば、税務調査での否認リスクが圧倒的に高いからです。
タワーマンション節税はメリットが大きいものの、やり方をミスすると無効化されるというデメリットがあります。そのため、高級賃貸物件として他人に貸し出すようにして相続開始から5年以上は投資用物件として運用していた実績を作るといいです。その後であれば好きに売却して問題ありません。
これらの注意点やリスクを認識したうえで、正しくタワーマンションを活用して節税対策を練るようにしましょう。
生前対策や相続税申告の場面では、依頼する専門家が非常に重要になります。相続に特化し、さらには節税や不動産、株式などにも精通した専門家に依頼しないと相続税が非常に高額になるためです。
実際のところ、正しく相続対策を講じていないため多くの人が損をしています。
ただ、相続に大きな強みをもつ専門家を厳選したうえで相談すれば、通常よりも税金が1,000万円も違うのは普通です。また、当然ながら実務経験が多く知識のある専門家に依頼するほど、相続後の争いも少ないです。
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